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2023/05/15 15:11


この記事では、バラココーヒーに使われている「リベリカコーヒーツリー」の魅力的な世界に深く入り込み、その特徴を明らかにしていき
ます。リベリカの木の秘密を知ることで、バラココーヒーをより深く理解することができます。さっそく一緒に見ていきましょう。

リベリカ種の起源とフィリピンでの歴史的背景

リベリカコーヒーツリーは、西アフリカのリベリアの豊かな森林に野生の状態で育っている珍しいコーヒー品種です。リベリアからウガンダ、アンゴラに至るアフリカ西部および中央部が原産です。主に東南アジアの一部の限られた地域で栽培されています。

フィリピンにおけるリベリカコーヒーは、1740年代に種子がメキシコから持ち込まれ、スペインの修道士によって初めて導入されました。バタンガスの平地に植えられ、すぐにその他の地域にも広まりましたが、コーヒーさび病の蔓延でほとんどが失われてしまいました。20世紀以降、フィリピンのコーヒー栽培はアメリカからもたらされた病気に耐性のある品種が主流となり、栽培が困難なリベリカ種を育てる農家はごく限られています。フィリピンにおけるリベリカコーヒーは「カペン・バラコ」の名前で親しまれ、主に国内向けに生産されていますが、近年は輸出を目指してより高品質なバラココーヒーの栽培を試みる活動もなされています。

バラココーヒーの歴史とフィリピンのコーヒー文化についての記事はこちら

アジアの各地で栽培されているリベリカコーヒー

19世紀末に植民地支配者によってインドネシアにもたらされ、コーヒーさび病で死滅したアラビカの木を置き換えるために使用されました。現在でも、中部・東ジャワ地方や西カリマンタン州の一部地域で見つけることができます。19世紀にジャワ島からの移民によって導入されたマレーシアでは、主にジョホール州西海岸のコーヒーベルトで栽培されています。また、南アメリカ大陸北部のガイアナのアマゾン雨林の奥地に、レアでユニークなリベリカの栽培品種が存在します。他にもセイシェル、アンダマン・ニコバル諸島での生育が確認されています。

リベリカツリーの特徴

リベリカツリーは背が高く20メートルにも達達することがあり、はしごを使って収穫されます。リベリカの実、豆、葉の大きさは、すべてのコーヒー品種の中でも最も大きい部類に入ります。大きくて広い葉は、コーヒーチェリーに適した日陰を提供し、最適な成長条件を確保します。

特筆すべき特徴の1つは、この木の頑丈な性質で、他のコーヒー品種が苦労するかもしれないさまざまな気象条件に耐えられる点です。低地や平地でも栽培が可能で温度変化に強く雨が少なくても育ちます。リベリカコーヒーの木は、標高200m以下の低地や平地でも生育する性質を持っています。一方、アラビカコーヒーの木は標高800m以上、ロブスタコーヒーの木は標高400mから800mの高地で栽培されることが多いです。

栽培に関する考慮事項と課題

リベリカコーヒーの木は他の種に比べて育つ標高が低いのですが、成長するのに時間がかかり収穫量が少ないこと、コーヒー豆の大きさにばらつきがあって焙煎しにくいことから、栽培国での自家消費にとどまっており世界的に見ても生産量は非常に少ないです。また、木がかなり大きく育つため、生産量を確保するには広大な土地が必要になります。剪定や定期的なメンテナンスを行うのも簡単ではありません。

さらに、コーヒーチェリーを収穫することも課題となります。木の高さとチェリーの大きさが大きいため、はしごが必要です。リベリカは果実が成熟するまでの時間が長く、手間がかかるうえに収穫量も少ないため、商業ベースでの生産に向いていません。果実が大きくて加工がしずらく、豆の凸凹のせいで乾燥や焙煎にばらつきが生じてしまうため、味を安定させることも難しいです。

リベリカコーヒー豆の風味と特徴

そんなリベリカコーヒー豆の見た目や味について、誰もが気になることでしょう。リベリカ種は、アラビカ種やロブスタ種など他のコーヒー品種とは異なる独自の特徴を示します。その豆は特に大きく、非対称で片方がとがっており、先端がフックのような形をしているのが特徴です。中央の溝も他の品種と比較してギザギザとしています。

また、リベリカ豆のカフェイン濃度は3大品種の中で最も低く、1.23 g/100 g で、アラビカ豆は 1.61 g/100 g、ロブスタ豆は 2.26 g/100 g です。リベリカコーヒー豆の味わいは酸味が少なく独特で、「しっかりとした」「豊か」「味わい深い」と表現されることが多いです。スモーキーでウッディなノートと、フローラルやフルーティーな余韻のニュアンスが絶妙に調和した香りを楽しませてくれます。この独特な味わいに魅せられたコーヒー愛好家の間で熱烈な支持を集めています。

フィリピンの伝統的なバラココーヒーは深煎りですが、焙煎しにくいリベリカ豆を淺煎りにするという新たな試みを行っているという情報もあり、興味を惹かれるところです。

希少性と市場での評価

リベリカコーヒーの栽培は難しく、豆の形状や大きさによって品質が変わるため、扱うことは簡単ではありません。また、世界レベルで希少性が高く供給量が限られているため、リベリカ豆の価格は高額になり、プレミアムリベリカ豆の価格はさらに高くなる傾向があります。それでも、リベリカコーヒーの独特の味わいと希少性から、多くのコーヒー愛好家にとって高価格であっても手に入れる価値があるとされています。

まとめ

リベリカの木は、その素晴らしい特性と風味プロファイルにより、フィリピンの豊かなコーヒー文化の象徴となっています。その独自の特性と栽培上の難しさが、バラココーヒーの魅力につながっていると言えるでしょう。リベリカの木の特別な特徴を理解することで、この貴重なコーヒー品種を栽培する際に必要な課題や取り組みを深く理解し、その世界的な遺産を守り続けることができます。

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